訓練(Training)

事業用実地試験振り返り3

ヘリパッドを離陸

訓練で慣れ親しんだ空域まで飛行する。

風は南風。訓練エリアまで速度80ノットで巡航しますと独り言のように呟く。
これはあくまでも試験官に自分が何を考えているのかを伝える目的でもある。

 

訓練エリアってどこからどこまでなの?頭に入れてる?

 

フライトに集中していた私は急な質問に一瞬うろたえる。
しかし、数日前に訓練エリアを聞かれた時の対策として飛行区分チャートに対象のエリアをマーカーで引いていたのを思い出す。

チャートを脇から取り出し

 

これです。マーカーで引いてるエリア内で訓練可能です。

 

試験官は「ふ〜ん」という一言。この対策が功を奏した。

訓練エリアに到達。

口述ではきっとそこまで良くない評価だろう。フライトで評価点を稼ぐしかない!
そう頭を切り替え覚悟を決めた。

 

 

訓練エリア入域。高度○○フィート、速度○○ノット、ヘディング○○度。最初にスティープターンを実施します。

 

バンク角を一気に45度に傾ける。
それに合わせて高度が下がらないようパワーを足しペダルを中立にし機体が滑らないように調整。
訓練通りバンク、ペダル、速度、パワーと意識。

ロールアウト後(旋回後)のHDが開始時より10度くらいずれたが、高度と速度はなんとか維持することができた。

次の科目はセットリングウィズパワーからの回復。

これについては同じように速度、高度、ヘディング、非常事態があった際の着陸場所を選定し試験官に伝える。

先ずはOGEホバー。
このOGEホバーが苦手で訓練では苦労した。
コテクティブを下げ速度を落とすため機首をあげる。
40ktあたりからバックサイド領域(パワーが必要となる領域)になるため、徐々にコレクティブをあげパワーを足すがこの時に高度が上がらないようVSIの±0ftを維持し続け計器速度0ktまで落としていく。

 

計器速度0ノット確認。セットリングへ移行。

 

コレクティブを下げる。
今まで大量の下向きの空気流を推進力とし機体がその場で静止していたが、その場で高度を落としていくことで自ら吹き降ろしてる空気流に入る。
そして、コレクティブをあげても高度が上昇せず機体が降下し続ける”セットリング”の状態にする。

この時は翼端渦が大きくなりボルテックルリングというものが発生する。そしてブレードの失速域と呼ばれる領域が増えることで、サイクリック(操縦桿)が振動し始める。
”振動感知・回復”と試験官に伝え回復操作を行う。
コレクティブを下げるとともに、サイクリックを少し前に倒す。
こうすることによってピッチを減らし吹き下す風を減らす。
(イメージとしては扇風機の強➡︎中に変えることで風量を減らすような感じ)
そして前方に進むことで自分が吹き降ろしていた気流から抜け出し揚力を回復させる。

この時にサイクリックを前に倒すのは少しだけでコレクティブを下げることで機首が下がるので前にサイクリックを倒しすぎると機首が下がりすぎて回復操作ではなくなり危険な状態になる為、慎重に行わないといけない。

イメージ通りとはいえなかったが、この科目は難なく終えた。

次は基本計器飛行。

フードというものを被り外部視認(前方)を妨げ、計器しか見えない状態にする。

最初は1分間直線的に飛行する。
次は右左どちらかに上昇しながら半方位まで旋回を続ける。
1分間を目安に10度という浅いバンク角で半方位にきたときに旋回開始時の高度より500ft上昇していなければならない。
これが奥深くて少しでもバンク角が深いと半方位に到達する時間が早くなり、浅いと遅くなる。また、±500fのレートで旋回しないと半方位の時に500ft上昇しきってない。
旋回時に少し多めにコレクティブをあげてパワーを使わないと±500ftのVSIまでもっていくことが難しく、気温や機体の重量よってはその500ftの目安になるところまでパワーを使えないことがある。
その時は速度を落とし上昇する時に必要なパワー(余剰馬力)を確保したりと色々と考えることも多いし計器も細かくクロスチェックしないといけない。

上昇旋回が終わると次は降下しながら半方位まで旋回し科目は終了となる。

訓練通りに計器のクロスチェックを意識し試験の実施細則内に収めることはできた。
少し落ち着き試験官にフードを外すことを伝える。

 

フード外します。you have.

 
 

りょうか〜い。I have.

 

試験官のりょうか〜いと緩い答え方に少し安堵を覚えたような気がする。
同時に額に汗をびっしょりかいていたことに気付く。

やばいやばい、緊張している。落ち着かないと!と再度自分に言い聞かせる。

 

 

エアワークを終え、タッチアンドゴーを行う為戻ります。

 


この時は試験官からの返答が無かった。安堵が少し不安へ変わる。

慣れ親しんだ管制にコンタクトしタッチアンドゴーをリクエストする。

よし、残り半分。やってやる。 こう言い聞かせ離陸した場所へ戻るのであった。

次回へ続く。

 

 

POSTED COMMENT

  1. 挫折したパイロット より:

    事業用試験合格、本当におめでとうございます!
    私もたまフライターさんと一緒に訓練をしてたらパイロットになってたかも知れません。
    正直、辛かったときも多かったと思うけど、信頼出来るスクールで信頼出来る仲間が居るって本当に羨ましく思いました。
    私は今、新たな道でパイロットになるくらい辛い思いを味わいながら自分の道を切り開いています。けど、たまフライターが夢を叶えたように私も夢を叶えます。
    お互い、更なる夢が叶うことを信じてるよ。
    また時間出来たら飯でも行こう!

    • たまフライター より:

      挫折したパイロットさん

      お祝いの言葉ありがとうございます。
      そうだったんですね・・・。正直、この界隈はスクールによって訓練費、訓練環境と全然異なりますよね。
      挫折したパイロットさんの心境は暗に伝わります…

      私も孤独の時もありましたが、仲間や悩みを聞いてくれる職員に支えられ何とか乗り切ることができました。そんな環境で挫折したパイロットさんと一緒に切磋琢磨していけなかったことがブログを書いてる身として無念でなりません・・・。

      何かをする時やチャレンジする時は計画通りにいかず、一歩進むと壁にぶつかり、また乗り越えてとする事が多く辛いと思います。
      私はライセンスの取得をしたものの仕事として活かしてない現状で、まだ夢に向かって歩んでいる最中でございます。
      ぜひ、時間に余裕ができた際はご飯を食べながらお互いの人生訓を楽しく語り合えたらいいなと思っております^^

      挫折したパイロットさんの新たな道がこれからより良い結果に繋がることを祈っております。
      そして、一歩一歩着実に。努力していけば結果は自ずとついてきます!!!頑張りましょう!

挫折したパイロット へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。